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「腹腔鏡下子宮がん手術及び診療報酬請求に係る検証委員会」の報告を受けて


 この度、長い間ご心配とご迷惑をおかけしてきました草加市立病院の婦人科手術問題に関する標記委員会の検証報告書が公表されました。はじめに、患者の皆様とご家族・関係者、そして市民の皆様へ、かつて草加市立病院産婦人科において一部不適切な診療が長年にわたり行われたことをお詫びいたします。治療のためとはいえ、薬や手術など人体へ何らかの侵襲を加えるという医療行為は、担当者の高い倫理意識を前提として社会的に成り立つものであり、それを揺るがすような事態が院内で生じたことに弁解の余地はありません。報告内容を真摯に受け止め、その概要をお知らせするとともに、病院事業管理者としての考えを述べさせていただきます。

 本件は診療報酬請求上の誤りに端を発し、実施された診療の質も厳しく問われることになりました。そのため、手術と術中・術後経過の評価を外部の専門機関へ依頼するなど、患者さんへの対応を優先としました。検証委員会ではなぜこの問題が生じ長期間続いたのかについて精査され、報告書において改革のための様々な提言がなされています。一方、保険診療上の過誤の詳細は監督機関により調査と評価が行われ、病院としてどのように対応すべきかの指示もいただくことになります。

 報告書によれば、7名の委員と調査担当弁護士を中心に平成30年5月から平成31年3月までに20回の会議が開かれ、25名の関係者ヒアリングを含む多数の資料が検討されました。検証作業では前提条件、コンプライアンス上の問題、医療安全の問題、患者さんに対する説明責任などを検討した上で原因等の分析が行われました。

 外部機関による手術の評価は、術者の腹腔鏡技術は一定のレベルに達しているもののがんの手術手技としては不十分であり、手術関連死亡などの重大な医療事故は無く手術成績も他施設に比し明らかに劣るとは言えないが、そもそもルールから外れた手術の評価を正しく行うことはできない、などというものでした。

 診療報酬の不正ないし不当な請求は、手術担当医師の保険診療と医療水準への理解不足が原因となったものですが、請求事務担当職員の知識も不十分でかつ本来行うべき確認作業が行われなかったなど、関係者・関係部署間の連携の悪さも加わって今回の事態を招きました。その後、診療報酬制度の改定や他医療機関からの指摘など、医事業務の現場にも経営責任者にも誤りを正す機会が何度か訪れたにもかかわらずそれらを活かすことができませんでした。

 以上の経緯を分析した結果として、委員会は草加市立病院のマネジメント体制に問題があるとし、すでに有している諸機能の回復と新たな「病院内部統制者」(仮称)の設置、各診療科・部門部署・委員会におけるマネジメントの再確認、風通しの良い組織づくりと病院事業管理者によるコンプライアンスメッセージの発信、PDCAサイクルの活用、病院機能評価の受審などを提言としています。また医療体制についても、チーム医療の再構築、インフォームドコンセントの再確認、倫理審査体制とクリニカルパスの見直し、診療の質の向上、ガイドラインの遵守、そして自己研鑽の必要性を強調しています。さらに、事務部門における意識改革、診療報酬請求における業務フローの確立と「見える化」、医事課の権限及び責任の明確化などを求めています。

 草加市は市立病院に地方公営企業法を全部適用し、病院事業管理者が病院長を兼務することで権限を集中しガバナンスを強化しつつ経営の効率化を図ってきました。しかし今回、病院はガバナンスの欠如とコンプライアンス意識の低さが指摘され、「病院内部統制者」(仮称)の設置を提言されるとともに、経営上の課題も顕在化してきました。地方公営企業法の理念やそのあり方との関係、「病院内部統制者」(仮称)の設置が今回のような問題へどのように効果を上げ得るかなどの検討を踏まえた上で導入を進めたいと思います。

 また、医事業務の執行と医療安全管理の機能不全は医事課の組織構成不備、関連各部署の責任体制不備、部署間の連携不備、産婦人科診療の放任、組織・委員会運営の統制機能欠如などが原因とされました。これらに関しては、すでに他院での医事業務経験者の採用による医事課の体制強化、医療安全管理体制の実効性確保、病院機能評価の受審準備、院内の各部局・部署の業務・担当領域と責任体制の明確化などを進め、同時に経営改善のための様々な取り組みを始めています。

 草加市立病院は地域の基幹病院として市民の期待が大きく、多大な経済的支援を受けることにより、救急、小児、心臓・脳血管など確固たる評価を得ている診療部門が整備されました。今回、保険診療上の制約を逸脱した婦人科手術により医療全体への信頼をも揺るがしかねない社会的な問題を生ぜしめたことを改めて深く反省するとともに、今後更に積極的な改革を行い、組織体質を根本的に改め真に市民のための病院へと生まれ変わることで信頼回復に努めたいと存じます。

平成31年4月23日 草加市病院事業管理者 
河 野 辰 幸